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失ったのは声、得たものは?


 何を成すにも対価が必要。
 そう、犠牲は付き物だ。
 ここ、クレッシェンテは特にそう言ったものが浮き彫りになる、そんな国だと私は思う。

「拷問マニア、何の用だ?」
「なに? その呼び方」
「事実だろ。昨日も監獄からは酷い悲鳴が聞こえた。番犬じゃなくお前の仕業だろ?」
 目の前の宮廷騎士団長にそう告げれば深い溜息を吐かれた。
「何?」
「君を呼んだのは、仕事だよ」
「仕事?」
「ああ、不本意だけどね」
 そう言ってジルは一枚の紙を渡した。
「……マジかよ……」
「何か文句でも?」
「いや、こんな額よく出せるな。って、厄介すぎる」
 マスターなら間違いなくこの紙を破り捨ててる。いや、引き受けるだろうか。
 この額を逃すのは惜しいというかもしれない。だけど、今の私の実力じゃ不安だということも確かだ。
「断る。他を当たれ」
「へぇ、珍しく弱気だね」
「現実主義なんだよ。私は」
 そう、玻璃とは違う。
 あいつならどんな依頼だって、成功率一割だって引き受けて、必ず成功させる。
 自分を犠牲にしてでも。
 だけど私は違う。
「仕事のために危ない橋は渡らない。そりゃあ、スリルは欲しいさ。けどな、死ぬって分かってる問題に首突っ込んだりはしないさ」
 そう、確実に死ぬ。
 相手が悪すぎる。
「魔女を何とかしたいなら、女王様直々に赴けっつーんだよ。生憎私はクレッシェンテ人じゃない。陛下のために命捨てるほど愛国心もないんだ」
 そう言った途端、ジルの視線は鋭くなる。
「それは陛下に対する不敬とみなすよ?」
「別に敬っちゃいないさ。私が敬う相手はマスターだけだ。私たちにとって国よりマスターが上なんだ。国外にも拠点は腐るほどある。別にクレッシェンテに拘っちゃいないさ。居心地は良いけど」
 そう、居心地は良いけど拘りは無い。
「国外追放になっても?」
「別に構わない。そんときゃそん時だ」
 クレッシェンテを失おうが自由があるならそれで良い。
「僕は嫌だ」
「は?」
「いっそ君を逮捕しよう」
「罪状は?」
「公務執行妨害。大体僕の頼みを断る時点でおかしいよ」
「……あのなぁ……暗殺者にも護衛にも依頼を断る権利はあるんだぜ? 騎士団じゃないんだからさ」
「知らないよそんなこと。君をずっと閉じ込めてしまおう。そうしたら国の外に行かない」
 本当に分からない男だ。
「それでどうするつもりだ? それじゃあ仕事にならない」
「別に構わないさ。君を留めていられるなら。逃げ出さないように足を切ろうか。声が出ないように喉を焼こうか」
「……ほんっと、拷問マニア」
「別に拷問じゃないさ。僕の趣味だよ」
「悪趣味」
 うんざりするほどの悪趣味はマスターと良い勝負だ。
「何事にも対価が必要だ」
「ああ」
「任務には報酬が」
「それで?」
「お前は私を留めたいというが、私が自由を失うことによって私は何を得る?」
 何もかも失うのであれば不当な取引だろう。
 いや、この男に掛かれば取引ですらない。
「得るものが必要?」
「ああ」
「与えられるのを待つんだ」
「待つんじゃない。先に半分受け取る。それが仕事だ」
「ふぅん。でも、得るものはいつも与えられるとは限らない」
「は?」
 おかしなことを言う。
「得るものは後から気付くかもしれない」
「後から?」
「ああ。君も陛下に仕えてみれば分かる。あの方の素晴らしさが。そして、自分が何をするべきなのか。何を与えられてきたのか」
 そう言うジルは、どこかいつもと違う。
 どことなく不気味ささえ感じさせる。
「目に見えない対価?」
「まぁ、そんなところだよ」
「生憎、目に見えるものしか信じないんだ。私は。信じるのは金と玻璃だけだ」
 そう言ってやると、ジルは深い溜息を吐いた。
「まぁ、今回は交渉決裂ってことにしといてあげるよ」
「……随分上からだな」
「当然だよ。この国では僕は君よりすっと地位も権力もある」
「財力なら私が上だ」
 ニヤリと笑ってみせればジルは少しばかり不機嫌そうな顔をする。
「もういい」
「同感だ」
 結局こいつと私は似ている。
「アンタが陛下を慕うように、私だって一応マスターを慕ってるんだよ」
 聞こえるか聞こえないか分からないくらい小さな声で呟いた。
 きっとジルには聞こえなかっただろう。
 彼は翳り始めた空を忌々しそうに一瞥し、監獄のほうへ足を向ける。

「水を得る代償は騎士団長の機嫌か?」
 
 本当に、何を成すにも対価が必要だ。
 この国は。
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テーマ : 自作小説 - ジャンル : 小説・文学

命の蝋燭

 地下の国。冥界と言うところには、人の命を管理する蝋燭があるらしい。
 一本一本に、名前が書かれ、それをハデスが管理している。
 なんて、随分前にシルバが話していた。

「マスター」
「なんです?」
「命の蝋燭って本当にあるの?」
「は?」
「名前の書かれた蝋燭」
 そう訊ねれば、マスターはしばらく考え込む。
「そうですね……あるとしても、この国では狂いまくっているでしょうね」
「え?」
「我々が火を消してしまう」
 マスターは笑う。
「火消し?」
「そんなところです」
 命を奪うのが仕事。
 だったらハデスにとっては随分迷惑だろう。
「だからハデスは女神が嫌いなの?」
「え?」
「火を消すから」
 ディアーナ。私たちの組織の名前でもある女神。
 けれども冥界の王は女神が嫌いらしい。
「違います。火を消すからではありません」
「じゃあどうして?」
「手が届かないからですよ」
 マスターは空を見上げた。
「え?」
「決して届かないんです。地下は天空に」
 天と地、まるで光と影。
 相反するもの。
「だから、ハデスとディアーナは敵対する?」
「別に、敵対なんてしませんよ。同業者です。ただ、お互い少しばかり気が合いすぎる。気が合うから問題なんです」
 仕事が被る。とマスターはうんざりした様子で言う。
「さあ、玻璃、仕事ですよ」
「うん」
「この三人を、一人ずつじっくり痛めつけて殺してやりなさい。そうですね、多少過剰な演出も構いませんよ。恐怖を味あわせろというのが依頼人の指定ですから」
「うん。わかった」
 恐怖と言うのはよくわからない。
 けれど。
 痛めつけるのは得意。好きじゃないけど。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。可愛いドーリー」
 
 私はまた、命の火を消しに行く。
 冥界のハデスは怒るだろうか?
 それとも。

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自作お題 挑戦リスト

御伽噺で10のお題

1.忘れてきた片方
2.白馬の王子様
3.千匹皮
4.鉄のハインリヒ
5.塔の上のお姫様
6.目の前の茨の道
7.失ったのは声、得たものは?
8.危険な寄り道
9.命の蝋燭
10.意地悪な妖精


順番ごちゃごちゃでありえない解釈含めて挑戦したいと思います。
ってか、これ全部元ネタ分かる人居るんだろうか。
ほぼグリムで固めたつもりなんだけど、やっぱり解釈は個人の自由だろうなぁ。
作った本人が固定概念に縛られそう。
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